スプレッドとは何か。その計算方法やFXブローカーごとの違いについて解説します。
あなたはTVやニュースなどの為替の価格の報道で「現在の円相場は100円10銭~15銭で推移しています。」といったコメントを一度は耳にしたことがあると思います。なぜ「100円10銭~15銭」と価格に幅があるのでしょうか。外国為替取引というのは、売るときと買うときでレートが異なります。そして、この価格差は、その通貨の買値と売値の差(乖離)を表していて、それを「スプレッド」と呼んでいます。スプレッドは、FX取引する際に必ず存在するものであるので必ず知っておくべき知識の一つです。この仕組みを知ることによって、大きな損失を避けることができるものであるので、基礎的ではあるが、非常に重要な知識の一つであると言えます。この 記事では、FXにおけるスプレッドについて詳細に解説していくのと同時に、各FXブローカーのスプレッドの比較やスプレッドの具体的な計算方法、さらにトレードする際の注意点なども併せて解説していきたいと思います。
目次
FX取引のスプレッドとは
スプレッドとは通貨を売る時の値段(BID)と通貨を買う時の値段(ASK)の差」のことをいう。スプレッドはFX取引を行えば、必ず発生するものである。
為替取引は「2way price」
FX取引では、通常二つの価格が提示される。これは「2way price」(ツーウェイプライス)と呼ばれるものである。それぞれ「トレーダーが売ることができる価格(買値)」と「トレーダーが買うことができる価格(売値)」の2つの価格を提示している。
例えば、米ドル円のレートの場合「買値1ドル=100円10銭、売値1ドル=100円」のように、買値と売値のレートが二つ表示される。この際の、買値と売値の差(100.10円ー100円=0.1円)がスプレッドである。
仮にスプレッドがなかったとすると、トレーダーが買い値で買って売値で売ったとすると利益も損失もゼロということになるが、実際はスプレッドが存在し、買い値よりも売値のほうが安く設定されている。そのため、トレーダーはスプレッド分だけ損失となる。FX取引で利益が出るのは、価格がエントリーした方向へスプレッド以上に有利に進んだ場合である。
スプレッドはFX会社や通貨ペアによってその幅が異なってくる。スプレッド幅が小さいほどトレーダーにとって取引コスト(手数料)が低く押さえられることとなるため有利な取引環境になると言える。
FXのスプレッドは通貨ペアにより違ってくる
FXは多数の通貨ペアを選んでトレードするが、通貨ペアによってもスプレッドが異なる。流通量が多い通貨ペアほどスプレッドが狭くなる傾向にある。特に米ドル/円の通貨ペアは、FX業界全体で何とかスプレッドを狭くしようと努力してきた歴史的な経緯があると聞く。
スプレッドはFXブローカーや通貨ペアにより異なる
スプレッドはFX会社や通貨ペアによってその幅が異なってくる。スプレッド幅が小さいほどトレーダーにとって取引コスト(手数料)が低く押さえられることとなるため有利な取引環境になると言える。
日本人ならトレードで必ず選択する通貨ペアとなる「米ドル/円」であれば、国内証券会社の場合、スプレッドはおおむね0.1銭~0.3銭の小さなものである。しかし、いくらスプレッドが小さいといっても、トレード回数に比例して取引コストは増えていくものである。したがって、スキャルピングなど1日に何度もエントリーを繰り返して小さな利益を積み重ねていくトレードスタイルの場合、スプレッド分のコストが積み上がってしまうことになり、注意を要する。
スプレッドの変動要因とは
いざトレードしようとすると、なぜかスプレッドが広がっていたという経験をお持ちの方はいらっしゃると思う。
FXブローカーによってはドル円スプレッド原則固定0.2pipsということを広告しているものもあるが、あくまで固定スプレッドは原則固定であり、これには例外が存在するということに注意しなければならない。
それでは、スプレッドが大きく変動する要因(例外)とはいったい何なのか。スプレッドが大きく変動する要因は、主に市場の需給バランスが崩れるときである。要因としては次のようなことが考えられる。
- 雇用統計などの重要な経済指標発表前後
- 災害や要人発言などのビッグニュース
- 明け方の時間帯や年末年始
以下詳細に説明していく。
雇用統計などの重要な経済指標発表前後
米国雇用統計発表日や各国の政策金利発表などといった、重要な経済指標発表前はその結果の動向を見守るためにトレーダーが取引を控え様子見するため、取引の流動性が一時的に低下する。しかし、経済指標が発表されると注文が一気に増加し、価格が急激に動くこととなる。
FXブローカーは急激な価格変動が起きた時、固定のスプレッドのままでは対応しきれないため、スプレッドを広げて対応する。結果、重要な経済指標発表前後はスプレッドが広がりやすなるくなるのである。
災害や要人発言などのビッグニュース
戦争やテロなどの国際情勢の変化が起こるとその国の通貨の価格が急変する。すると急激な相場変動が起こりスプレッドが拡大しやすくなる。
最近では最近の例として、2020年春に新型コロナウイルス感染拡大が引き金で起こった「コロナショック」の相場大変動がスプレッドに大きな影響を与えた。
また、主要国の首脳や政府高官、中央銀行の総裁といった要人による発言により相場が大き変動し、これがスプレッドの拡大の要因になることもある。特に米国のFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言は市場に重く受け止められる傾向があり、相場が神経質に上下動してスプレッドが拡大する要因となりやすい。
明け方の時間帯や年末年始
日本時間の朝5時~8時くらいまでの間は、世界の主要な為替市場が開いていない時間帯であり、市場参加者が少なく流動性が低下することからスプレッドが広がる傾向にある。
また、クリスマスや年始年末は多くの海外投資家が長期休暇を取って相場から離れるため、取引量が大幅に減少して流動性が低くなりスプレッドが広がる 傾向にある。
スプレッドの計算方法
例えば、ドル円のスプレッドを「0.2銭」だとしよう。各通貨単位で計算すると以下のようになる。
[1万通貨単位の場合] 0.2銭×10,000通貨 = 2,000銭 = 20円
[1,000通貨単位の場合] 0.2銭×1,000通貨 = 200銭 = 2円
1万通貨単位でトレードをした場合、スプレッドが0.2銭だとコストは20円となり、0.4銭の場合は40円となる。したがって、スプレッド0.1銭で1万通貨で取引をする場合、スプレッドは10円ということになる。
10円というと小さい金額に思えるかもしれないが、トレード回数は1回だけではないため取引回数を増やせば当然トレーダーの取引コストとして積み重なっていくこととなるので注意を要する。また、1万通貨単位の1回のトレードで10円の取引手数料が掛かるということは、10万通貨取引なら100円となる。これを1日100回トレードを行った場合、100円×100回で、10,000円もの違いになってくる。
さらに、100万通貨単位、1000万通貨単位とロット数を増やしてトレードをすると、それに応じて取引コストは増えていくこととなる。そのため、資金管理という面からも自身の許容範囲でのロット数とトレード回数の調整は不可欠のものとなる。
スプレッドまとめ
今回のスプレッドについて解説いかがでしたか。
スプレッドが広がる要因や時期は様々ですが、それを知っていると知っていないとでは大きな差がでます。広がりやすいタイミングを避けることができるからです。また何の根拠もないトレードをしてしまうと取引コストがかさんでしまうため、優位性のあるタイミングでのトレードで利益を増やしていきましょう。